hohoemi 15-2 of 広小路クリニック



HOME > hohoemi 15-2


bind_01.jpg

NO15-2『理解されにくい前頭側頭型認知症の夫と10年』

 要介護度2 被介護者 夫72歳  介護者 妻67歳

前頭側頭型認知症の夫(72歳)を介護しています。今から考えると、50歳代半ばから気になることがいくつかありましたが、病気ではないかと疑ったのは、本人退職後、61歳半の頃です。

いくつかの医療機関を受診し認知症と診断されたのが65歳4か月の時。広小路クリニックに移り「前頭側頭型認知症」と診断が下されたのは68歳になっていました。
前頭側頭型認知症の症状は、日常の生活ができるのにもかかわらず、人格・性格が極端に変わっていく人格障害が顕著ということです。また意味もなく同じ内容の言葉を繰り返したり、同じ行動を繰り返したりする行動障害があり、周囲の方々には不快感ばかりを与え、理解されない状況にあることです。

夫の場合の心理・行動障害(BPSD)は柱や机、金属製品などの硬いものを拳で連打したり、両手をパチパチと打ち鳴らしたりし、高い音を出して悦に入るということです。67歳頃から見られるようになりました。
最初は、浴室で2つの洗面器をリズミカルに叩き楽しんでいるようにみえましたが、そのうちにガレージにある中が空洞のスチールの支柱や公園の滑り台などを叩き、うるさいと苦情が来るようになりました。

「叩く」という症例は数が少なく、なかなか理解されません。歩行などの体の動き・視力聴力などはほぼ正常なので、訪問調査員さんにも分かっていただけず、調査結果、判定結果の介護度は何度も要介護1になってしまいました。通常のチェック項目による通常の調査ではクリアしてしまうということがわかりました。区分変更をかけ、主治医の先生の意見書の効力もあり、現在は要介護2になっています。

デイサービスの職員さんにも、また他の利用者さんにもなかなか理解していただけず、トラブルを起こし、次々と施設を変わらざるを得ない状態でした。
家での様子は、デイサービスに行かない日は、私の運転する車で午前中はあちこちドライブ(行かないと叩き続ける)、午後は昼寝と入浴、夜は早々に就寝。夫が、叩かないように叩かないようにといつもそばで見守るというか見張る日々。また、最近は、着るものが分からず私のものを着たり、着る順番が分からなかったり、前後を間違えたりで衣服を身に付けることに異常が出てきています。

私は、不安な毎日の中で、少しでもこの「叩く」行為を自分なりに理解したくて、折に触れ情報集めをしてきました。「ああ、そういう人いるよ」という情報はいくつか得られましたが、実際にその方やその家族に接することはできませんでした。

平成26年7月に訪れた前頭側頭型認知症のためのグループホームで、同じような症状の58歳のAさんという女性に会うことができました。職員さんの話から、Aさんは、その施設に入るまでの3年間在宅で、大声を出しながら壁等を叩き、その施設に入ってからも大声を出しながら壁等を叩き続けていたということです。この施設に入って5年経った今はこの行動はほぼ治まったということでした。そのケアは、全職員さん共通理解・同一歩調のもと、24時間「パーソンセンタード(その人を中心とした)ケア」を実施しているということでした。

夫は、あちこちデイサービスを変わり、平成26年4月より、「M」というお泊り可能な小規模なデイサービスを利用させていただきました。「M」の相談員Oさんは、かつて特別養護老人ホームの相談員さんを経験されたことがあり、何人か前頭側頭型認知症の利用者さんを扱ったことがあるということでした。Oさんの夫への対応は、初日から夫の隣に座り、常に夫に語りかけてくれました。夫もOさんといるときは落ち着く様子が見られるようになりました。

今まで、初めのうちは好感をもって迎えられていても、次第に人間関係が悪化してきたという経緯があります。また私自身体調を崩してしまいました。そこで、今後、夫も私も少しでも楽になれたらいいなと思い始めました。そのためには、本人の心理・行動障害の源となることに少しでも近づきたいと考え、木野先生にお願いして、現在、FS病院に検査入院させていただいています。
FS病院では、プライドの高さが原因と言われ、今、本人のプライドが満たされるようなケアをやっていただいています。
夫の症状改善が見られ、私の体調が回復すれば、また在宅介護に戻ることになるのか今のところわかりませんが、穏やかな暮らしができるようにしたいと思っています。

[木野医師コメント]:前頭側頭型認知症は認知症の中でも患者さんが極端に少なく、始まりの症状もアルツハイマー型認知症のように「もの忘れ」ではなくかかりつけ医でも初めから診断できないことも多いです。 F.Aさんは「叩く」という症状が介護するご家族や周囲の人を困らせるので、私もあらゆる薬物療法を試みましたがうまくいかず今日まで来てしまいました。今入院中の病院で叩く行為の心理的な原因が解明されれば、対応方法が見つかるのではないかとご家族と一緒に期待しています。