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NO16-2『結婚60年、特養入所の夫と大家族で祝う』

夫90歳 要介護3  レビー小体型認知症  介護者 妻89歳

老健から、特養へ。お世話になって1年余りになりました。
歩いて入所したのに、即車椅子に変わりました。 
私自身、これでいいのかなと正直いって不安になりました。

それからというもの、歩く事も無くなり、おのずと運動不足です。
たちまち足がむくみ始め、しばらくマッサージをお願いしたこともありました。
ある時、ストッパーをかけないで立ち上がったり、
トイレに一人で行って帰りは車椅子を忘れて部屋に戻ってしまったり。

施設側の方に
『これでは怪我が心配です。何かあっても困るし、ご家族の方、
それだけは是非承知しておいて下さい。』と注意を受けました。
多少歩けたのがかえって悪かったのだと思います。

当初は帰宅願望が強くて、私が4日に1度面会に行っているのに、
突然職員に、
『金を貸してくれ。女房が来ないから、今帰って、離婚して来る。』
と憤って変なことを言ったり、
夜トイレ介助して下さっている職員に
『家へ帰る、家へ帰る』
と困らせる。

職員が
『未だ朝の3時で暗いし、今晩はここへ泊まるよう頼まれてるから、
明るくなったら来てもらいましょう。』
と言うと、夫は
『うそを言うな!!ふざけるな!!』
と言うなり、男性の眼鏡をわしづかみにひったくり、
フレームを真っ二つに折ってしまいました。
のち、施設からの連絡で、ただ、頭を下げるばかりです。
結果、話し合いで弁償させてもらいました。

現役の頃、土木建築だったせいか今だに夕方になると
『オーイ、オーイ。左官屋。 左官屋はどこへ行った』
と大声で辺り構わずせさけぶ。
職員が
『左官屋さんは、夕方だしもう帰りました』
というと、
『何だ俺に一言の挨拶もしないで帰ったのか』
とその日は不機嫌だったようです。



2月 私達夫婦は結婚して60周年。“ダイヤモンド婚”を迎えました。
夫90歳、私84歳ということで、息子達一家が祝ってくれました。
食堂にデコレーションケーキを持ち込み、大勢でハッピーバースデーを
手拍子で合唱しました。
夫は何事かと大きく目を見開いて、皆の顔を覗き込み、キョロキョロ、
リズムのメチャメチャ、手が痛くなる程、思いっきり叩いて大爆笑しました。


大好きなうなぎを『旨いなあ、旨いなあ』と言いながら完食したのは
もちろん夫が一番乗り。食欲は大変旺盛です。

それからまだ5分も経たない時でした。
ふと店に貼ってあるうな重の絵を見ると、
『なんだ、これを今から食べるのか?』
長男びっくり、思わず容器の空を見せて
『親父、今食べたばっかりじゃん』
『うーん、そうか 今食べたのか』
孫達も大きな声で
『おじいちゃん、しっかりして』
とみんな笑顔、笑顔で楽しいひと時を過ごしました。


長男『まあ、その時、その時をたのしめればいいか。』
これ以上期待しても無理の様です。
私達夫婦は優しい子ども達に恵まれて本当に幸せです。


4月 日曜は次男が工事した中伊豆公園へ連れて行こ
ということになりました。
嫁がお寿司やたくさんのおかずを作ってくれました。
丁度桜祭り、桜も満開です。
音楽や踊り等大勢の人達で大変な賑わいでした。
満腹後、広い公園を一回り、上り坂あり、下り坂あり、
車椅子を押しながらの散歩でした。私たちも一緒です。

『親父 解るかなぁ 一緒に工事した所だよ、思い出したかなあ』
すると突然私に
『お兄さんが大変だから、お前少し押してあるけよ』
『え?お兄さん?◯◯だよ。お父さんの息子だよ』
と言っても、理解できない様でした。
幾日もかかってやった公園の工事、全て忘れていて残念。


帰り際、丹那牛乳の売店で、ソフトクリームを食べながら、
夕方施設へ送り届けました。


『親父!!俺、◯◯だよ、◯◯!!』
別れ際、大声で教えましたが、もう最後は
『いいよ、いいよ。嬉しそうな顔をみれただけでさー』
と笑い合い、一日が終わりました。


入所は帰宅願望が強かったあの頃、正直いって施設へ預けた事自体、
これで良かったのかと罪悪感さえ覚え、一時苦しみました。
でも今となれば、施設にも慣れ、
そこが我が家のような気がしている様で職員の気配りにも感謝しております。


この間まではあれ程、◯○、◯◯、と私の名前を呼んでは
施設をぐるぐる回りながら、探した夫も、
今は認知症も少しずつ進み、耳も遠くなりました。


名前は忘れても、面会に行くとそれはそれは嬉しそうな笑顔です。
私の髪の乱れを一生懸命なでてみたり、ネックレスにさわったり、
つかの間の二人だけの時間。
これをささやかな幸せというのものでしょうか。


6月に入って、突然、車椅子から離れて転倒。
以前施設側から注意を受けたことが現実となりました。
大腿骨転子骨折、手術、入院20日余り。
今は退院し、施設へ帰りました。


木野先生も施設の方へ何回かお出でいただき、解らなくなった夫に
優しく声をかけて下さったり、
今後の事など看護師さんと打ち合わせをして下さって
本当にありがたく思います。


趣味は仕事だと言う程、ただ働き抜いた夫です。
過去の大変だった事は忘れて、大切に見守って行くつもりです。