hohoemi 17-2 of 広小路クリニック



HOME > hohoemi 17-2


bind_01.jpg

NO17-2『遊行期に入った主人を見守っていきます』

夫 91歳 要介護度3     介護者 妻 85歳


“ほほえみの会”に出会って3回目の近況報告です。
書くに当たって、過去2回のレポートを読み返してみました。 
嫉妬妄想に苦しめられ、私自身体調を崩し体重は極度に減少するし、
胃がん手術で入院と、あの頃のことを思うと、目頭が熱くなります。

 
二人暮らし、“老老介護”、世間で良く聞く話に私ばかりではなく多くの人が
苦しんでいる現実に、本当に心が痛みます。
特養へ入所して2年あまり、主人も今はすっかり落ち着きました。
“帰宅願望”も全くなくなり、笑顔で私を,迎えてくれます。
時には私の名前を忘れても、「俺の女房」だということは分かっているようです。


大腿部頸部骨折により、完全に車椅子生活になりました。 
出来れば二歩でも三歩でも歩いてほしいと思っていたのが、、
今は両足で蹴って館内を回るのが精一杯、でも楽しそうだし、
「まあ、いいか」と思うようになりました。



実は、私、このところ自分の心境の変化に気付きました。
つい先日まであんな暴力に耐えた日々のことを思う
そのことが何かに付けて頭をよぎるのです。
面会に行っても、表向きは笑顔で接しながらも心中は穏やかになれない
自分が居ました。 
頭の片隅で、それでは余りにも淋し過ぎると感じたこともありました。



あんなに元気で、仕事一筋の優しかった主人、病気がそうさせているのだと
解っていながら許せない私、半ば義務感で逢いに行った過去でした。
でも、今ではそんな考えに、申し訳ないと罪悪感さえ覚えるこの頃です。
そして、可愛い天使のような笑顔に心が洗われる思いです。



先日、主人が突然、女性の介護士の手を両手に挟んで頭をかしげながら、
自分の頬へすり寄せる姿を見かけました。 
びっくりしたのと同時に、ニコニコと大変幸せそうな様子、
それを黙って自然に受け入れる介護士に感謝しました。


そんな仕草を見たとき、ふと五木寛之の書『遊行の門をくぐって』の
一節を思い出しました。
遊行期とは「人生の最後の締めくくりである死への道行きであると共に、
幼いこどもに帰って行く懐かしい季節である」とありました。


主人を見て、まさにこれかと納得しました。
今は耳も遠くなり会話も通じ合えないことが多々ありますが、
60年余夫婦で居られた幸せに感謝しています。



そしてこれからも大事に見守ってさらに明るく過ごしたいと願っています。