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NO17-3『壁や机を拳骨で叩く<前頭側頭型認知症>』

夫 75歳 要介護度3     介護者 妻 74歳


夫の異変に気付いたのは約20年前と思っていましたが、今になって振り返ると、
もっと前に車の中に飴をおいて、運転中に頻繁に飴を食べていたのを思い出し、
それが始まりだったと思います。
25年ほど前のことです。そしてその約5年後くらいから、道が分からない間違える、
古い友人のことが分からない、通夜に来ない、夕べ話したことを忘れているなどから
認知症を疑い、病院の受診を勧めてもなかなか応じず、それは困ったことでした。



65歳の時漸く受診し、その時はアルツハイマー病と診断されました。
診断が下ってから約2年。来る日も来る日も車を乗り回し、交通違反、自損事故、
ブレーキやエンジンを故障させる、他人の車との衝突事故。
幸い人身事故に至らなかったものの、この車を乗り回すことが次に困ったことでした。
息子が来てくれて車は廃車にし、免許証は返納しました。



文字を読んだり書いたり、数字の力、特に計算はよくできる、長谷川式認知症テストに
出てくる立方体図形や時計などは正しく描ける。
また、歩く、ベッドの上での寝返り、数秒の片足立ちなど体を動かすことはほぼ普通に
できるため、介護度認定調査では介護度が低すぎて、区分変更を願い出ることも度々で、
これも困ったことでした。



病名は、アルツハイマー病ではなく前頭側頭型認知症となりました。
アルツハイマー病にはない症状。
壁や机、看板、スチール製のものなどを拳で連打する。
硬いものを連打して出る音は、聞く人をイライラさせ不快にさせるものです。
周囲の方々、特に近所の方々、デイサービスの利用者さんや職員の方々には常に
ご迷惑をかけ通しでした。このことが今までで最も困ったことです。




こういう症状はあるけれど数が少ないため、同じ症状の人を介護している方と話を
したいと思っても、未だにお会いすることができません。
ネットや書物で調べたり、講演を聞いたり、家族の会に参加したり、認知症のテレビ番組は
いつもビデオにとって見たり、実際にいろいろな施設を見学させていただいたりしてきました。




岡山県にある日本でたった一つの前頭側頭型認知症の人のためのグループホーム『ラールゴ』を
見学させていただいた時、叩くという症状の女性(58歳)がいました。
大勢の利用者さんに出会っている職員の方々でも「あの人はひどかった」というほど、
大声を出しながら叩き続けていたそうですが、この施設に入所5年、日中はその症状が
治まってきたという話を伺い、ただただ驚きました。
たまたまその女性に合ったケアであったのかもしれないが「パーソンセンタードケア」を
受けていたということでした。




ご近所にご迷惑をかけるのを少しでも減らすため、ケアマネジャーさんと相談して、
デイサービスの利用を増やす、デイサービスに行かない日は外出をしてできるだけ家に
居ないようにするなど試みました。
外出とは、私が運転する車であちらこちらドライブすることでした。



夫の介護に心身ともに疲れた私は、とうとう体調を崩してしまいました。
このままでは介護を続けられない、またこれからの介護のために、叩くことの
原因に少しでも近づきたいと27年3月、FS病院に入院してもらいました。
夫は、入院することを拒否するでもなく落ち着いていますが、叩くことは減ったとはいえ
まだ続いています。



いま、私は週に1~2回病院に行っています。
天気のいい時は、2人で町中の公園を散歩したり、道の駅で買い物をしたりします。
外出しない時は、病院の中の階段を上り下り、ふれあいの家(広小路クリニックが併設)の
体操や口腔機能訓練をします。
小さなノートに、今日の日付・天気・自分の名前・生年月日・住所・妻の名前・子供たちの
名前を書いてもらいます。間違えずに書けるのは、自分と妻の名前・天気でほかのものは
書けたり書けなかったりです。
ほかには、ビンゴゲーム・コマ回し・歌(唱歌や校歌)を歌うなど楽しいひとときを過ごすように
心がけています。


病院での夫の活動は、週2回の入浴、時々の作業療法(得意なことや趣味、ストレッチや歌)があり、
たまに病院の近くでの野菜作り。ほかは自由に一日を過ごしているようです。
春は花見に、6月はバラの鑑賞に病院の車で出かけています。7月に「夏祭り」、9月に「敬老の日」
11月に「病院祭」があり、家族も参加して一緒に楽しみます。



病気は進んでいるでしょうが、極端に症状が悪化しているようには見えません。
少なくなったとはいえ、叩くことはまだまだ続いていて患者様にご迷惑をおかけしていますが、
病院の職員の皆様のおかげで落ち着いた日々を過ごしています。
平成27年7月に、前頭側頭型認知症は指定難病になりました。
患者数は、全国で推定約12,000人だそうです。
平成29年8月21日に指定難病の申請をし、決定されるのを待っているところです。