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NO20-2『若年性認知症として発症して介護医療院へ入院して5年、コロナ禍で4ヶ月面会出来ない』

被介護者 夫 75歳  介護度3      介護者  妻 77歳

前頭側頭型認知症の夫(77歳 現在 要介護3 )を介護しています。

 

発症(50歳頃から甘いものを食べ始めた)してから約27年。

2015年3月に現在の介護医療院に入院して53カ月が経ちました。

2016年8月には指定難病に認定されました。

 

 

昨年12月末から今年2月初めまで、インフルエンザウイルス感染予防のため面会禁止。

2月末から現在まで、新型コロナウイルス感染予防のため面会禁止。

2月末以来、本人にはずっと会うことができません。

 

介護医療院の3階に居住していますが、今、患者さんはそれぞれの階から他の場所に

移動することはできないということです。

リハビリもリハビリ室を使わずに、それぞれの階で行っているそうです。

 

 

 

 

夫の主症状は、机・壁等硬いものを拳で連打することで、それを長い間ずっとやっていましたが、

このところ減り始めているそうです。

最近は発語が少なくなり、首を縦や横に振って意思表示をすることが多くなっています。

発語が少なくなると言うことは、前頭側頭型認知症のほとんどの人に現れる症状です。

 

 

 

 

最近、雑誌で阿蘇山を見て「行ったことがある」と意思を表したと知りました。

確かに、学生時代に1人で九州旅行をしたと聞いたことがあります。

 

発症の頃から、飴やバナナなど甘いものを多量に食べ続け、血糖値が高くなり薬をのんでいましたが、

栄養士さんによる食事療法で血糖値は落ち着いてきて薬を飲まなくなりました。

 

食事はミキサー食です。若い頃は早食いでしたが、今は食べながらあっちこっちきょろきょろ眺めていて

食べることがのろいです。

それで、一番早く配膳してもらい皆さんと一緒に食べ終えるように配慮していただいています。

 

 

 

 

歩行についてはもともと健脚タイプで、比較的しっかりとした足取りでしたが、

この頃は、前傾姿勢で不安定な状態で、転倒も見られるようになり、

シルバーカーにつかまりながらの歩行になっています。

 

 

排泄・入浴・更衣等は全介助を受けています。

 

 

 

 

面会禁止になるまでは、私は1週間に一度介護医療院に行って、院外散歩、階段歩き、簡単な体操、

唱歌を歌う、ビンゴゲームや五目並べなど、家でやっていたことを一緒にやってきました。

結構楽しんでやっているように思われました。

 

 

 

今は、新型コロナウイルス感染の収束がいつになるのか、面会禁止の解除がいつになるのか、

解除になったときに果たしてまた歌を歌ったり、

ゲームを楽しんだりすることができるのだろうかと気がかりです。

 

 

 

 

 

[木野理事長コメント]

 

前頭側頭型認知症は認知症の中では大変少ないタイプで比較的若年の男性に多い傾向があるが、

記憶障害(もの忘れ)が少ないので診断されないことが多い。

 

 

しかし、この方のように海馬の萎縮が高度で長谷川式知能検査で、

当院初診時から記憶障害が目立つケースもあり、

前医では2ヶ所ともアルツハイマー型認知症の診断でアリセプトが処方されていました。

 

 

また要介護度は1が続いたが「トントン叩いて困る」という特有な症状を強調して

やっと判定会議で要介護度2と認められたのは初診から3年半を要しました。 

介護者の奥様は、トントン叩く行為(常同行動と言います)の対応を探るため

県の「認知症の人と家族の会」でアドバイザーとして出席している

 

 

高木啓先生に相談したり、前頭側頭型認知症の患者さんが多く入院している

岡山の「きのこエスポアール病院」を担当ケアマネと見学してきました。

同じ症状の人がそこには居るということが分かり勇気付けられたと聞きます。

 

 

認知症専門病院へ入院してすでに5年以上経過しましたが、

病院から医療介護院と名称が変わり施設のように長期入院ができることになり一安心でしょう。

 

今はコロナ禍で面会ができないですが、身体的な病気には素早い対応を取ってもらえるので

心配はしていないということです。